保育園での噛みつきを無くすことは可能か?
今日は保育園での噛みつきについて考えてみます。
保育者にとっても、保護者さんにとっても悩ましい問題です。
私の園でも連日噛みつきが発生しており、噛みつきが多い子にマンツーマンで対応していても、ほんの一瞬目を離したすきに「噛まれてしまう」ということが続いています。しかも厄介な事に、噛みつきは「同じ子が同じ子を狙う」ことが多いことも、保護者対応等で悩んでしまうところです。
先に結論を述べておくと、大切なことは噛みつきを「無くす」ことよりも「受け入れる」ことだと思います。その方法について以下で考えていきたいと思います。
なぜ噛みつきは起こるか?
理由については他のサイトでもよく出ているので詳しくは述べませんが、まだ言葉が出ない1~2歳の子を中心に、トラブル時などで、条件反射で口が出てしまうケースが多いのではないでしょうか?
ただし、今年の私の園では、玩具の取り合いなどトラブルでもなく、いきなり自分から近づき、噛みつきに行くという子がいるため、一概にトラブル時だけケアをしておけばいいという問題で無い場合もあります。
噛みつきを防ぐためには?
最も効果的かつ現実的な対策としては、やはり「常にその子から目を離さない」ことがまず挙げられます。ただ、限られた人員で回す必要もあるので、私の園では散歩から帰ってきた後など、全体がバタバタする時間などはおんぶをすることもあります。なるべくなら自由に遊ばせたいのですが、噛みつきを防ぐためにはこうした方法しか無い場合もあります。
後はこれも有名な方法ですが、噛みつきそうな時に大声をあげてビックリさせる方法ですね。遠くにいて、止める手が間に合わなくても、ビックリして噛みつきが止まることも多いです。
ただし、根本的に噛みつきを無くす方法は残念ながら無いと思います。
なぜならば昔から保育園の噛みつきの問題は存在し続けています。昔が少なかったわけでも、今が多くなったわけでもなく、恐らく常に問題としてあり続け、保育者、保護者は悩み続けてきたのだと思います。
一方、保育士である親が子どもを他の保育園に預けて、「自分の子が噛まれた」と大騒ぎする人はいないでしょう。なぜならばその位、「噛みつきは防げないこと」を誰よりも知っているのが保育士です。
それならば噛みつき自体を無くすよりは「保育者と保護者が噛みつきについて同じ知識を持つこと」が重要なのではないでしょうか?
噛みつきをクレームに繋げないために ~保護者さんへ~
まず保護者の方に知っておいてほしいのは「噛みつき」は
- 365日100%噛みつきを防ぐことは不可能。保育士1人につき子ども1人なら可能。
- 誰もがやる可能性があるし、誰もがやられる可能性がある
- 1か月噛まれ続けた子が、その2か月後、今度は噛みつきまくることはザラにある
- 同じ子が同じ子を狙うことは本当に多い
- 噛みつく子は抵抗されにくい子を選んで噛むことが多い
- 言葉が出てくる2~3歳になると減るケースが多い
- 基本的に「親の愛情不足」や「子育ての仕方」は噛みつくかどうかについて関係ない
- ただし、睡眠不足や寂しさなどの理由から噛みつくこともある
- 「気の強い子」「自己主張が強い子」が噛むケースは確かに多い
- 先生はいつも頑張って止めようとしている
※3について、「噛みつかれたことで噛みつきを覚えたため」か、「単なる発達の段階」かは分かりません。ただし、その子がその環境で負けないように自分も噛みつくようになることは、成長としては正常な状態であると考えられます。
※7と8について、「完璧な生活習慣で愛情たっぷりの子」でも噛みつく場合もあるし、「睡眠不足」や「ママの出張で寂しくて不安」等の理由から噛みつきが増えるケースもよくあるので、一概には言えません。
上記の通りほとんど「多い」や「ある」などの言い方にしています。子どもの性格やクラスの状況などによって条件は無限に変わるので、「絶対~です」ということはありえないからです。
でもそんな答えが無い問題に先生達はいつも頭を悩ませ、製作などの準備もしながら「どうすれば噛みつきが無くなるか」を常に考えています。
噛みつきをクレームに繋げないために ~園・保育士さんへ~
これは私の園でもやっていることなのですが、「入園時に予め全て伝えておく」ことに尽きると思います。
最近は保護者さんも「噛みつきはしょうがない」ことをネットなどの情報で知っている方も多いので、「大丈夫ですよ、しょうがないですよ。」とその時は言ってくれる方も増えているのですが、
いざ「顔を噛まれた」「3日連続で噛まれた」となると、「おいおい」と思うのが普通の親心です。
やはり話で聞いていたことと現実に自分の子どもがやられたとなれば、話が変わってきます。それはもうしょうがないので、丁寧に謝罪をするしかないのですが、
入園時に「ほんっとうに噛みつきは多いです(特に1歳児クラス)。噛まれた子が噛むこともよくあります。」などや「噛みつきを防ぐために園で実施している事」を事前に伝えているかどうかで、親御さんの反応もかなり変わってきます。
連続で噛みつかれた後に「実は1歳児クラスは・・」と言われても素直に聞けないのが普通の心情です。
噛みつきを無くすのではなく、受け入れられるように
噛みつくことは、「スプーンを使えるようになる」「ジャンプが出来るようになる」と同じ発達の一部分です。つまり成長のためには噛みつくことが欠かせないとも言えます。
「僕それをやられると嫌だよ。」「そろそろその玩具貸してよ。」「そんなに嫌がらないで一緒に遊んでよ。」というメッセージが噛みつきとなって現れます。他者に自分の気持ちを伝えるという重要なコミュニケーション方法です。
保護者さんが「噛みつき」についての知識を持ち、「成長のためには無くてはならないものなんだ」と理解して頂ければ、保育者も「また噛みつきが起きたらどうしよう。」「噛みつく子に厳しく伝えなくちゃ」という負のイメージから抜け出すことが出来ます。
お互いが理解を持ちつつ、噛みつきを無くすための努力をし続けることが必要だと思います。
ここまで記事を読んで頂き、有難うございました。